フルタイム勤務で行政書士合格は「無理ゲー」か?働きながら800時間を捻出する戦略的スキマ時間活用術

仕事が忙しくて、勉強する時間が全く取れないよ…

フルタイムで働きながら、合格率10%前後の難関試験に挑むなんて無謀じゃないの?
行政書士試験に挑戦しようとする社会人が、最初にぶつかる壁は「法律の難解さ」ではありません。物理的な「時間のなさ」です。朝から晩まで会社に拘束され、残業や人間関係に神経をすり減らし、帰宅したときには体力は限界をむかえている人も多いでしょう。
そんな状況で、合格に必要とされる「800~1,000時間」を捻出するのは、一見すると「無理ゲー」のように思えるかもしれません。
しかし、事実は異なります。実は行政書士試験の合格者の多くは、あなたと同じ「フルタイムの社会人」です。彼らは決して特殊な能力を持っていたわけではありません。ただ、社会人という自らの「属性」を理解し、大人としてとりくむべき戦略を実行したに過ぎないのです。
この記事では、忙しさを「不合格の言い訳」から「合格の武器」に変え、最短ルートで180点の壁を突破するための具体的な生存戦略を解説します。行政書士試験を舐めてかかると痛い目に合いますが、戦略さえあれば道は必ず開けます。
1. 【属性分析】「フルタイム労働者」という属性の強みと弱み
社会人が受験勉強を始める際、まず行うべきは「敵を知ること」以上に「自分(の属性)を知ること」です。学生や専業受験生と同じ土俵で戦おうとすれば、確実に力尽きます。
弱み:圧倒的な「予測不能性」
フルタイム労働者の最大の弱点は、勉強時間が「外部要因(仕事)」に支配されていることです。突発的なトラブル、上司からの急な飲み会の誘い、終わらない残業。緻密に立てた学習計画が1日で崩壊するリスクを常に孕んでいます。この不安定さこそが、社会人受験生が挫折する最大の要因です。
強み:仕事で培った「納期意識」と「情報の密度」
一方で、社会人には学生にはない強力な武器があります。それは、業務で培われた「締め切り(試験日)」への執念と、限られた時間で成果を出す効率性です。
独断と偏見で言えば、10時間ある学生よりも、1時間しか捻出できない社会人の方が、脳の「情報の吸収率」は圧倒的に高くなります。なぜなら、「今ここで覚えないと、次はない」という極限の集中力が働くからです。また、商法や会社法の分野では、実務での経験がそのまま理解を助けるという「大人のアドバンテージ」も無視できません。
逆にいえば時間が少ないにもかかわらず集中して取り組むことができないのであれば、行政書士試験合格は難しいと考えたほうがよいでしょう。
2. 【数字のリアル】800時間の壁をどう解体するか
一般的に行政書士試験合格には800~1,000時間の学習が必要と言われています。11月の試験日までの残り日数を逆算し、この膨大な時間をどう「解体」するかが勝負です。
| 期間 | 平日の学習量 | 休日の学習量 | 合計時間(目安) |
|---|---|---|---|
| 初期(導入期) | 1.5時間 | 4時間 | 概念の理解に注力 |
| 中期(演習期) | 2.5時間 | 6時間 | 過去問をみっちり回す |
| 直前期(3ヶ月前~) | 3.5時間 | 8時間以上 | 模試と記述式対策 |
「平日に2時間半なんて無理だ」と思った方もいるでしょう。しかし、これは「机に向かう時間」だけを指しているのではありません。フルタイム受験生の成功の鍵は、「スキマ時間の完全支配」にあります。
「机の時間」と「スキマの時間」を分離せよ
社会人が合格するためには、学習内容を以下の二つに明確に分ける必要があります。
- インプット(理解): 通勤電車、昼休み、家事中などの「スキマ時間」で、YouTube講義を聴き流す、あるいはテキストを数ページ読む。
- アウトプット(演習): 朝の出社前や帰宅後の「机に向かえる時間」で、過去問を解く、あるいは記述式の構成を練る。
この分離ができていない人は、貴重な机の時間を「テキストを眺めるだけ」という非効率な作業に費やし、本試験で痛い目に合うことになります。
3. 【壁の正体】忙しい人が必ず「痛い目に合う」三つの落とし穴
これまで多くの受験生を見てきましたが、フルタイムで働きながら不合格になる人には、共通の「属性」があります。以下の三つの罠に自分がハマっていないか、厳しくチェックしてください。
① 完璧主義を目指してしまう「致命的な病」
行政書士試験で大きなウェイトを占めるのが民法と行政法です。この二つだけでも勉強するべきことは非常に多いです。それにもかかわらず、枝葉末節にこだわりすぎて勉強がなかなかすすまない人がいます。
また、明らかに試験に出ないところに興味をもち考えたり、悩んだりしてしまう人もいます。
特に初学者の最初の一歩に関しては、全体像をつかむくらいの感じでサクッと勉強をすることが大切です。細かいところ、試験に出そうになところをスキップできる余裕が大切です。
② インプット偏重の「お勉強」ごっこ
分厚い基本書を最初から最後まで丁寧に読み、マーカーを引いて満足している人。残念ながら、そのやり方では試験日までに「民法」が終わるのが関の山です。社会人は最初から「過去問」を横に置くべきです。わからないなりに問題を解き、間違えた箇所だけをテキストで確認する。「逆算型の学習」こそが、大人のための最短ルートです。
③ 睡眠時間を削る「安易なドーピング」
特に試験3ヶ月前になると、焦りから睡眠時間を3時間程度に削る人がいます。しかし、民法や記述式問題で求められるのは「論理的な思考力」です。寝不足の脳では、複雑な事例を整理できず、凡ミスを連発します。睡眠は学習効率への投資だと考え、最低でも6時間は確保する勇気を持ってください。
4. 実践!働きながら合格するための「4 STEP 学習サイクル」
フルタイム勤務の1日を、いかに「合格への24時間」に再構築するか。具体的なサイクルを提案します。
誰にも邪魔されない朝の30分~1時間は、最も脳が冴えています。ここで論理的思考が必要な「民法」や「行政法の重要判例」をみっちり解きます。朝にノルマの半分を終えておくことで、日中の仕事のストレスが軽減されます。
満員電車や移動時間は、もはやあなたの「教室」です。ワイヤレスイヤホンを活用し、YouTubeのプロ講師による解説を1.5倍速で聴き流します。文字で読むと30分かかる内容が、動画なら15分で理解できます。
仕事で疲弊した夜に、難解な新しい論点を学ぶのは非効率です。夜は「すでに解いたことのある過去問の解き直し」や「一問一答アプリの消化」など、淡々とこなせる作業に特化します。
まとまった時間が取れる週末こそ、40字記述式のトレーニングや、模試の復習を行います。また、平日には手が回らなかった商法・会社法などのサブ科目をみっちりと片付けます。
5. メンタル管理:仕事のストレスを「合格のエネルギー」に変換せよ
フルタイム受験生にとって、メンタル管理は学習そのものと同じくらい重要です。
「仕事が忙しくて勉強できない」と嘆くのではなく、「この生活から脱出するために、今は勉強するしかない」という飢餓感を持ってください。上司との理不尽なトラブルや、将来への不安。それらすべてを「絶対に合格して人生の選択肢を広げてやる」という正のエネルギーに変換するのです。
また、周囲の理解を得ることも「戦略」の一つです。試験前の数ヶ月は、会社の飲み会を断る、家事の分担を相談するなど、自分の属性を「受験生」に完全にシフトさせる環境作りを躊躇しないでください。
まとめ:11月の試験会場で「実務家」として立つために
フルタイムで働きながら行政書士試験に合格したという事実は、単なる資格取得以上の価値があります。それは、あなたが「圧倒的な自己管理能力」と「限られたリソースで成果を出す戦略性」を持っているという、最強の実務家としての証明になるからです。
行政書士試験は舐めてかかると痛い目に合いますが、スキマ時間をみっちりと支配し、1日1ミリでも進み続ける意志があれば、180点の壁は必ず越えられます。仕事の忙しさを、不合格の理由にするのはもう終わりにしましょう。むしろ、その忙しさこそが、あなたを効率的で強靭な受験生へと変えるはずです。
11月の試験会場。疲れ果てた表情ではなく、やるべきことをやりきった充実感を持って席に着いてください。その先に、あなただけの輝かしいリーガルキャリアが待っています。



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