mini記述:民法物権#13

動画内容は、下記の「ウェブテキスト版」と同一です。そのため、動画を視聴しないで、下記の「ウェブテキスト版」のみに取り組んで頂いても問題はありません。
なお、解説内容は「アザラシ式記述対策講座」のものとほぼ同一となります。

ミニ記述チャレンジ ウェブテキスト版

問題1

Aは1,000万円をBに貸し付け、BはAのために所有する土地に抵当権を設定した。その後、Bは抵当権が設定された土地に家屋を建築した。このとき、抵当権者Aは一括競売を行うことで土地とともにその建物を競売することができる。

この場合、Aはどのような範囲で貸付金を回収することができるか20文字程度で記述してください。

正解例
土地の代価のみ優先弁済されることになる。(20文字)
優先権は土地代価のみに行使することができる。(22文字)

【解説】
この設問の事例は、抵当権設定時に建物が存在しないので法定地上権は成立しません。つまり、土地の抵当権が実行された場合、その土地上に家屋をもつBは何の権利もなく占有している状態になり邪魔な存在となるわけです。
Bが建てた家屋が邪魔なら、いっそのこと土地と家屋をまとめて競売にかけてしまうのが一括競売というわけです。そもそも、Bは抵当権が設定された土地に家屋を建てる時点で、そのリスクを許容しないといけないのです。
ただし、Aは家屋に抵当権は設定していません。担保にとっていない家屋からお金を回収するのはおかしいので、優先して弁済を受けられるのは土地の代価のみになるわけですね。
なお、Aは一括競売をするのか、Bが建てた家屋を撤去させるのかを選択することができます。一括競売をするかどうかはAが決めることになるわけです。

問題2

Aは複数の者のために所有する家屋に抵当権を設定した。その後、Aは当該家屋をBに賃借権の登記をしたうえで賃貸した。しかし、賃借権の登記より前に登記された抵当権が実行されてしまうと建物の借主Bは抵当権者に対抗できない。

この場合に、借主Bが抵当権者に対抗するためになにを行う必要があるのか25文字程度で記述してください。

※賃借権に劣後する抵当権者はいないことを前提とします。

正解例
全ての抵当権者の同意を得て、同意の登記をすること。(25文字)
【解説】
家屋の借主Bは本来であれば、先に設定された抵当権に勝つことはできないため、その借りている家屋の抵当権を実行されると出ていかなければなりません(猶予期間はある)。
しかし、賃料の支払いをきちんとする借主や、テナントの収入を支える人気店借主などであれば抵当権を実行してもそのまま継続して入居してもらったほうが良いと考えるケースもあります。
そこで、賃借権の登記をして、先順位のすべての抵当権者の同意を得て、その同意の登記をすれば抵当権者に対抗することができるようになります。賃借権の登記より後に登記された抵当権者に関しては同意不要です。
実務で使われることはあまりないと思いますが、こういった特殊ケースに対応する規定もあることを知っておいてくださいね。

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参考条文
民法
(抵当権の内容)
第三百六十九条 抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
2 地上権及び永小作権も、抵当権の目的とすることができる。この場合においては、この章の規定を準用する。
(抵当権者の同意の登記がある場合の賃貸借の対抗力)
第三百八十七条 登記をした賃貸借は、その登記前に登記をした抵当権を有するすべての者が同意をし、かつ、その同意の登記があるときは、その同意をした抵当権者に対抗することができる。
2 抵当権者が前項の同意をするには、その抵当権を目的とする権利を有する者その他抵当権者の同意によって不利益を受けるべき者の承諾を得なければならない。
(抵当地の上の建物の競売)
第三百八十九条 抵当権の設定後に抵当地に建物が築造されたときは、抵当権者は、土地とともにその建物を競売することができる。ただし、その優先権は、土地の代価についてのみ行使することができる。
2 前項の規定は、その建物の所有者が抵当地を占有するについて抵当権者に対抗することができる権利を有する場合には、適用しない。
(抵当建物使用者の引渡しの猶予)
第三百九十五条 抵当権者に対抗することができない賃貸借により抵当権の目的である建物の使用又は収益をする者であって次に掲げるもの(次項において「抵当建物使用者」という。)は、その建物の競売における買受人の買受けの時から六箇月を経過するまでは、その建物を買受人に引き渡すことを要しない。
一 競売手続の開始前から使用又は収益をする者
二 強制管理又は担保不動産収益執行の管理人が競売手続の開始後にした賃貸借により使用又は収益をする者
2 前項の規定は、買受人の買受けの時より後に同項の建物の使用をしたことの対価について、買受人が抵当建物使用者に対し相当の期間を定めてその一箇月分以上の支払の催告をし、その相当の期間内に履行がない場合には、適用しない。
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