高校生でも行政書士試験に合格できる?「現役高校生」を武器に変える戦略と、10代のキャリア選択

行政書士試験に合格するのは、大学生や社会人ばかりじゃない?
この意見は多くの場合で事実で、現実に合格者の大半は大学生や社会人が占めます。ところが、10代の現役高校生がこの難関国家試験を突破し、合格証書を手にしているケースもあるのです。それも、大人が数年かけてたどり着く領域に、わずか半年の学習で到達するケースもあります。
結論から言えば、高校生という「属性」は、行政書士試験において大人が羨むほどの最強のアドバンテージとなる側面もあるのです。
しかし、学校の勉強の延長線上で受かるほど、行政書士試験は甘くありません。憲法や一般知識という「貯金」はあっても、民法や行政法という「未知の巨大な壁」が立ちはだかるからです。
また、仮に合格したとしても「18歳の士業」は簡単に目指せる道ではありません。
この記事では、大学受験との両立から、進学せずに独立を目指す場合の「資金と信用」というケースまで解説していきます。
1. 【属性分析】大人が羨む高校生の「三つの最強武器」
行政書士試験において、高校生は社会人が数万円の受講料を払って手に入れようとする「基盤」を、すでに無料で持っています。
① 憲法の貯金(公共・政治経済のリード)
高校の「公共(公民)」や「政治・経済」で学ぶ憲法の知識は、行政書士試験の憲法科目の土台そのものです。
大人の初学者が「国会・内閣・裁判所」の統治機構や、基本的人権の判例を一から覚え直す中、高校生はそれを「今、まさに定期テストのために暗記している」という鮮度の高さで保持しています。この知識のフレッシュさは、暗記効率において大人を圧倒します。
もちろん、行政書士試験で学ぶ内容と比べれば知識としては浅い面もあります。しかし、それでもほぼゼロから学ぶ大人と比べれば大きなアドバンテージになるのです。
② 基礎知識の無双状態(文章理解と時事)
行政書士試験には「基礎知識(旧:一般知識)」という、全14問のうち6問正解しなければ全体が不合格になる「足切り」が存在します。ここで、多くの社会人が苦しみます。
しかし、現役高校生にとって、基礎知識で出題される「文章理解(現代文)」は日常の風景です。また、共通テスト対策で学ぶ世界史・日本史・政治経済の知識があれば、一般知識の足切りリスクは極めて低いと言えます。
基礎知識では時事問題も出題されるため、高校で学ぶ知識だけですべてをカバーできるわけではありません。しかし、高校で学ぶことは行政書士試験における基礎知識の足切りを免れるのに大きな力となることでしょう。
③ 圧倒的な「受験脳」の慣れ
「机に数時間座る」「情報を整理する」「制限時間内に解く」という、試験に勝つための基礎体力がピークにあるのが高校生という属性です。大人が「勉強の習慣化」に苦労している間に、高校生はすでに数千問の演習をこなす準備ができています。
2. 【壁の正体】学校では絶対に習わない「三つの魔物」への対処
しかし、貯金だけで合格できるほど行政書士試験は甘くありません。配点の6割以上を占める以下の領域は、高校生にとって完全に「未知の世界」です。
- 行政法(配点の核): 行政手続法、行政事件訴訟法。高校では単語すら出てきません。しかし、これこそが行政書士の専門領域です。論理構成が独特で、最初は拒絶反応が出るかもしれませんが、ここを制覇しない限り合格の二文字はありません。
- 民法(大人のルールの裏側): 契約、抵当権、相続。社会経験のない高校生にとって、「善意無過失」や「対抗要件」といった概念をリアルな事例としてイメージするのは至難の業です。ここを単なる字面の暗記で済ませようとすると、ひっかけ問題で確実に痛い目に合います。
- 商法・会社法: 経済の授業で「株式会社」は習いますが、法律としての細かな規定(株主総会の決議要件など)は全く別物です。高校生にとっては最も優先順位を判断しにくい「鬼門」と言えます。
3. 大学受験との「二刀流」戦略:相乗効果を最大化する
「行政書士の勉強をしたら大学受験に失敗するのではないか?」
そんな不安があるかもしれませんが、文系志望者にとってはむしろ強力な相乗効果が期待できる場合もあります。
大学入試をハックする武器
法学部や経済学部を目指すなら、行政書士試験で学ぶリーガルマインドは小論文や現代文の読解において圧倒的なアドバンテージになります。さらに、総合型選抜(旧AO入試)において「高校時代に国家資格合格」という実績は、大学教授に対して「学習の継続性と論理的思考力」を証明する最高のエビデンスになります。偏差値だけではない「格」の違いを見せつけることができるわけです。
スケジュール管理の鉄則
ただし、理系志望や英語の負担が重い場合、無理な二刀流は自滅を招きます。おすすめは、11月の行政書士試験を「政治・経済の究極の模試」と位置づけ、10月までは行政法・民法をみっちり固め、直前期に憲法・一般知識を仕上げる戦略です。大学受験の「貯金」を活かし、最小限の努力で最大限の結果を出す工夫が求められます。
とはいえ無理は禁物
以上のとおり、大学受験と行政書士試験の両立は可能であるし、行政書士試験合格が総合型選抜(旧AO入試)において強い武器となることもあるでしょう。
しかし、そうはいっても大学受験の負担は相当に重たいもので、簡単に行政書士試験との両立をおすすめすることはできません。自身の置かれた立場や、目指す大学に合格するための勉強量などを考慮して決断するようにしましょう。
4. 【徹底検討】進学せず独立を目指す「資格一本」という選択の真実
合格後に大学へ進学せず、18歳で「行政書士事務所」を開業してプロとして生きる道もあります。18歳で行政書士として独立開業することは可能ですが、それは簡単な道のりではありません。
① 資金調達の絶望的な壁:親の抵抗
行政書士として独立するためには最低でも数十万円はかかります。独立後にかかるお金も考慮すると200万円程度は確保しておきたいところです。
「大学に行かなければ数百万円の学費が浮く。その金を独立資金にすればいい」という考えは成り立つでしょうか。
親にとって、学費は「教育という社会的な安全牌への投資」ですが、18歳の子供への開業資金は「成功確率不明のギャンブルへの出資」に映ります。親が大学の学費を出すのと、独立資金を出すのはイコールではありません。多くの親は、子供が「高卒・無職・個人事業主」という不安定な属性になることに猛烈な抵抗感を示します。
18歳が数十万円の登録料や、その後の事務所などの維持費を自力で調達するのは難しいでしょう。
② 属性による「信用の壁」
「大学に行けば社会的信用が増す」というのは半分は幻想です。しかし、ビジネスの現場では「属性によるフィルタリング」が厳然として存在します。行政書士の主な顧客は会社の経営者や、相続問題を抱える高齢者です。人生経験豊かな彼らが、自分の人生や会社の運命を左右する手続きを、自分の孫のような年齢の「高卒の新人」に任せるでしょうか?
そこには知識量だけでは埋められない「信用の壁」があります。この壁を突破するには、圧倒的な専門特化やITスキルなど、若さをマイナスからプラスに転換する並外れたブランディング戦略が必要になります。資格一本に絞るということは、その過酷な戦場に、丸腰で飛び込む覚悟があるかという問題になるのです。
5. 独立以外の選択肢
それでも、10代で合格を勝ち取ることには計り知れない価値があります。それは「独立」だけが正解ではないからです。
「寝かせる」という戦略
大学に進学しながら、資格を「保持」しておく。これだけであなたの就職活動や進路選択は大きく広がります。法学部の授業は復習に過ぎず、周囲が遊び呆けている間にあなたは他事務所での「補助者(インターン)」として、社会の仕組みをみっちり学ぶことができます。大学生活という安全圏にいながら、実務の感覚を養う。これが最もリスクの低い属性の使い方です。
ただし、行政書士は有資格者といえども求人が豊富にあるわけではありません。特に地方都市においては求人がひとつもない状況もありえることを知っておきましょう。行政書士事務所の求人がなければ、司法書士・税理士など隣接士業者の事務所も候補にするとよいでしょう。
司法試験へのステップアップ
行政書士試験で学ぶ憲法・民法・行政法・商法の四法は、司法試験予備試験や司法書士試験の基礎そのものです。
10代でこの基礎を完成させた人は、20代前半で弁護士や司法書士といった「さらに難しい資格」を手にする可能性が飛躍的に高まります。生涯年収で見れば、10代での合格は数千万円単位の経済的価値をあなたにもたらす可能性もあります。
6. 高校生のための「最短合格」黄金サイクル 5 STEP
未知の領域をどう攻略するか。現役高校生に特化した5つのステップを提案します。
教科書レベルの知識は完璧に理解し、暗記をその場で終わらせます。ここで稼いだ時間が、未知の法律への学習リソースになります。
高校生にとって馴染みのない「行政処分」や「善意・悪意」といった用語は、文字で追っても理解できません。プロ講師のYouTube講義を2倍速で視聴し、まずは「法律の世界のノリ」をイメージとして脳に馴染ませてください。
高校生の最大の強みは「物量」です。大人が仕事でできない数千問の過去問演習を、夏休みの間に一気に片付けます。ここで合否が決まります。
学校の休み時間や通学中に、条文を読み込みます。条文の言葉に慣れることは、記述式試験における「得点力」に直結します。
模試会場に行くと、自分より一回りも二回りも大きな大人ばかりで圧倒されるかもしれません。しかし、属性は関係ありません。あなたが解いている問題は大人と同じ。自分の実力を客観視し、修正をかける場として活用してください。
まとめ:11月の本試験会場で大勢の大人を追い抜くために
行政書士試験は、決して「大人のためだけの試験」ではありません。むしろ、現役の学生であり、ときには大学受験という知的トレーニングの最前線にいる高校生こそ、正しい戦略さえあれば合格に最も近い属性です。
もちろん、民法や行政法の壁は高く、合格後の独立開業には資金や信用の面で冷酷な現実が立ちはだかります。しかし、周囲が部活動や遊びに熱中している中で、独り机に向かい、未知の法律をみっちりと自分の血肉に変えていく経験は、合格証書以上の価値をあなたの人生に与えてくれるはずです。
舐めずに挑み、基礎を固めた者だけが見える景色があります。11月の試験会場で、あなたの隣で必死に参考書をめくる大人たちを、圧倒的な若さと実力で追い抜き、自分のポテンシャルを証明していくくことを目指しましょう。その挑戦の先に、あなただけの輝かしいリーガルキャリアが待っています。


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