行政書士資格は「履歴書」でどう評価される?転職・昇進におけるリアルな価値と、データが示す生存戦略

行政書士試験に合格すれば、就職先も見つけやすくなる⁉
もしあなたがそんな淡い期待を抱いて行政書士試験合格を目指しているのなら、早急にその認識を変える必要があります。行政書士試験は合格率10~14%前後の難関国家試験ですが、その「資格の名前」だけで企業が即採用を決めるほど、就職市場は甘くありません。
もちろん、「行政書士資格」の保持者を対象にした求人であれば、すんなり就職できることもあるでしょう。しかし、後述するとおり行政書士資格をもっている人に対する求人数は少ないのです。
しかし、絶望する必要もありません。行政書士という資格は、正しく「属性」を理解し、戦略的に履歴書へ配置すれば、転職や昇進において極めて強力な武器になります。
結論から言えば、行政書士資格は「雇われるためのライセンス」というよりは「独立して戦うためのライセンス」としての側面が強いです。
そのため、一般的な求人サイトを眺めているだけでは、この資格の真価を見誤り、就職活動で痛い目に合うことになります。公的な最新データを基に、その「リアルな価値」を解説していきます。
1. 【データ分析】求人の「出し手」の構造を知る
まず、あなたが履歴書を出すべき「受け皿」がどこにあるのかを理解しましょう。日本行政書士会連合会のデータを見ると、非常に特殊な組織構造が見えてきます。
94% vs 6% の衝撃的な「独立属性」
| 就業形態 | 人数(2024年時点) | 構成比 |
|---|---|---|
| 個人会員(独立開業) | 52,185人 | 約94% |
| 法人会員(勤務行政書士) | 3,120人 | 約6% |
このデータから導き出される答えは明白です。行政書士の求人が「見つからない」と感じるのは、そもそも登録者のほとんどが個人事業主であり、人を雇う側だからです。個人事業主として独立している行政書士事務所の多くは求人を出しませんし、出しても行政書士有資格者を求めるとは限らないのです。
つまり、「行政書士事務所に就職する」という選択肢自体が、非常に狭き門であるという現実を直視しなければなりません。
激増する「行政書士法人」という受け皿
一方で、ポジティブなデータもあります。求人の出し手となる「行政書士法人」の数は、2020年度末の694法人から、2024年度には1,152法人へと激増しています。
個人事務所から、組織として人を雇用する「近代的な法人」へとシフトしているのです。正社員として履歴書を評価させたいなら、ターゲットは個人事務所ではなく、これら急増中の「法人」に絞るのが論理的です。
2. 【転職のリアル】「職種名」の選び方で評価は3倍変わる
ハローワークや転職サイトで「行政書士」と検索して、「求人が少ない……」と嘆くのは、戦略不足と言わざるを得ません。
求人倍率の罠と「ポテンシャル採用」
- 有効求人倍率(専門職): 約2.3〜2.5倍
- 未経験可の割合: 約40%
数値上の求人倍率は高く、実は「人手不足」の状態です。しかし、行政書士事務所側は「即戦力」を求めているものの、現実には合格したての「実務未経験者」しか応募に来ないというミスマッチが起きています。
そのため、多くの法人は「未経験可」として、「難関試験を突破したという忍耐力・継続力」というポテンシャル属性を評価して採用を決めています。履歴書では「法律の知識」をアピールする以上に、「800時間以上の学習を継続し、結果を出した自己管理能力」をアピールすべきです。
検索ワードを「法務・コンプライアンス」へ広げる
資格単体の求人(全国で約300~500件)は、社労士や税理士の1/3以下です。しかし、一般企業の「法務部」「総務部」「コンプライアンス室」へ視野を広げると、求人数は一気に3倍以上に膨れ上がります。
企業側は、行政書士資格そのものよりも、「法的思考(リーガルマインド)ができる属性の人間」を求めています。契約書のチェックやコンプライアンス体制の構築において、行政書士の学習範囲である民法や行政法の知識は、実務において極めて高い信頼性を発揮します。
もちろん、社労士や税理士などの他士業事務所も候補として検討してよいでしょう。
3. 【昇進・年収のリアル】「480万円」をどう解釈するか
雇用された場合の年収データも、履歴書を出す上での重要な判断材料です。
| 区分 | 推定金額 | 評価のポイント |
|---|---|---|
| 平均年収(勤務) | 480.1万円 | 一般事務職よりは明らかに高い。 |
| 推定月給(未経験) | 20.5万〜24.0万円 | 専門職のスタートとしては標準的。 |
| 資格手当の相場 | 5,000円〜30,000円 | 企業内で「専門家」と認められる証。 |
この「480万円」という数字をどう捉えるべきか。独断と偏見を交えずに言えば、これは「ゴール」ではなく「投資期間」の給与です。
行政書士法人で実務をみっちり学びながら、給料をもらう。そして2~3年後に独立し、年収1,000万超を目指すための「修行代」と考えれば、決して低くない金額です。
また、一般企業内での昇進において、行政書士資格は「管理職候補としての法務リテラシーがある」という強力な証明になります。特に役所との折衝が多い建設業界や不動産業界において、この資格を持っていることの履歴書的価値は高いといえるでしょう。
4. 【地域格差】履歴書を出す「場所」を間違えると痛い目に合う
データが示す通り、求人の「地域格差」は極めて深刻です。
- 東京・神奈川: 約45%(圧倒的シェア)
- 大阪・兵庫: 約20%
- 愛知: 約10%
- その他地方: 残り25%
この偏りを理解せずに地方で就職活動をすると、「求人が全くない」という現実に絶望し、痛い目に合います。地方在住者がこの資格を履歴書で活かすなら、就職をゴールにするのではなく、最初から「地元での独立」を見据えた人脈作りに舵を切るのが、最も論理的な生存戦略です。
5. 履歴書・面接で「評価を最大化する」3つの伝え方(STEP)
単に「資格欄に行政書士と書く」だけでは不十分です。以下のステップで、あなたの「属性」を企業に売り込んでください。
行政書士試験は「10人に1人しか受からない」試験です。仕事と両立しながら、あるいは計画を立てて合格したという事実は、実務における「プロジェクト遂行能力」と直結していることを具体的に伝えてください。
「許認可の手続きができます」と言うよりも、「会社を法的なトラブルから守り、行政との円滑なパイプ役になれます」と言う方が、一般企業の面接官には刺さります。
データが示す通り、行政書士単体の求人は少ないです。しかし、「行政書士×宅建」「行政書士×英語(ビザ業務)」といった掛け合わせを提示すれば、履歴書は一気に「希少性の高い属性」へと進化します。
まとめ:行政書士資格は「最強のサブウェポン」か、それとも「メインの盾」か
行政書士資格の履歴書におけるリアルな評価は、「あなたがその資格をどう使うか」という意志により大きく左右されます。
「行政書士」自体の求人は少ないのが現実ですが、視野を広げたり、将来の方向性を独立に絞ったりすることで就職市場での立ち回りがかわってくるのです。
就職市場においては、1,100社を超える「行政書士法人」や、企業の「法務部」を狙うことで、年収500万円前後の安定したキャリアをスタートさせることが可能です。しかし、この資格の真の真価は、その先にあります。
データが示す「94%の独立組」が証明している通り、行政書士は最終的には自らの手で人生を切り拓くための「盾」であり「剣」です。履歴書に資格を書くその瞬間、あなたは単なる求職者ではなく、「法律のプロとしての第一歩を踏み出した表現者」であることを忘れないようにしましょう。
舐めずに挑み、みっちり基礎を積み上げて合格を手にしたあなたなら、就職市場の荒波も必ず乗り越えられるはずです。応援しています。


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