行政書士試験と司法書士試験の難易度の差は?どのくらいの差があるかを解説!

行政書士試験と司法書士試験の難易度の差は?絶望的な壁の正体を解説

「行政書士に受かったから、次は司法書士を目指そうかな」
このようにステップアップを考える人は少なくありません。法律系資格の登竜門として行政書士を取得し、その勢いで司法書士を目指す人は多くいます。

結論から言えば、難易度の差がかなり大きいです。

次の法律系国家資格を目指そうという考え方は素晴らしいですが、「難易度の桁が違う」という覚悟を持たずに挑むと、確実に挫折します。

行政書士試験は、受験する人の属性によっては短期間で合格可能です。
しかし、司法書士試験は、どんなに法学部でみっちり基礎を積んでいたとしても、それだけで通用するほど甘い試験ではありません。

この記事では、合格率や勉強時間などの表面的なデータ比較だけでなく、受験生層(属性)の違いから見る「真の難易度差」について解説していきます。

1. 合格に必要な「勉強時間」の圧倒的な差

まずは、合格レベルに達するために必要な標準的な勉強時間を比較してみましょう。
これを見れば、両者がまったく別の競技であることがわかります。

資格名 必要な勉強時間(目安) 学習期間のイメージ
行政書士 600~800時間
(初学者は1000時間程度)
半年~1年
➡大変ではあるが働きながらでも合格可能性あり
司法書士 3,000時間以上 専業で1.5年~2年
兼業なら3年~数年

行政書士試験が「800時間」であるのに対し、司法書士試験はその約4倍、「3,000時間」が必要です。
3,000時間と聞くと、1日3時間勉強しても約3年かかります。

つまり、行政書士試験が「法律資格への入り口」と言える難易度だとすれば、司法書士試験は司法試験(予備試験)に次ぐ「法律資格の最難関の一角」であり、求められる知識の精緻さが段違いなのです。

2. 近年の合格率比較:数字のトリックを見抜く

次に、合格率のデータを比較します。
(出典:一般財団法人行政書士試験研究センター、法務省 令和7年度試験結果より)

年度 行政書士 合格率 司法書士 合格率
令和7年度(2025) -% 5.21%
令和6年度(2024) 12.90% 5.28%
令和5年度(2023) 13.90% 5.20%

行政書士が10%強で推移しているのに対し、司法書士は常に5%程度です。
「なんだ、たった2倍の差か」と思う人もいるかもしれません。

しかし、この数字を額面通りに受け取ると痛い目に合います。
なぜなら、「分母(受験者)」のレベル(属性)が全く異なるからです。

行政書士試験の受験者層

行政書士試験には、法律初学者のチャレンジや、記念受験的な層も一定数含まれています。
そのため、実質的な競争倍率は見た目の合格率よりも高くなりますが、それでも「努力すれば届く範囲」です。

司法書士試験の受験者層

一方、司法書士試験を「記念受験」する人は少ないです。
3,000時間の勉強が必要と知った上で挑んでくる猛者たち、あるいは何年も浪人して人生を賭けているベテラン受験生たちがひしめき合っています。その「ガチ勢」の中での上位5%しか受からない試験。それが司法書士試験なのです。

3. 「誰が受けているか」

ここで、難易度を語る上で欠かせない「隠れたライバル」の存在について解説します。行政書士試験の難易度を底上げしている要因の一つに、「司法試験・予備試験受験生」の存在があります。

行政書士試験における予備試験組の影響

司法試験・予備試験の受験生は、行政書士試験を「滑り止め」や「腕試し」として受験するケースが多いです。彼らは、憲法・民法・商法・行政法といった科目を、予備試験レベル(行政書士よりはるかに高度なレベル)で仕上げてきています。

つまり、行政書士試験の合格者枠の一部は、これら「ハイスペックな受験生」によって最初から埋められている側面があるわけです。純粋な行政書士専願の初学者にとっては、彼らが合格率を吊り上げている分、見かけよりも合格へのハードルは高いと感じるはずです。

ここまで「司法書士試験より簡単」と説明してきましたが、これはあくまでも司法書士試験と比較した場合の話です。上記の事情もあるため行政書士試験も見た目の合格率よりも難易度は高く十分に難しい試験といえます。

司法書士試験は「別世界」

一方で、司法書士試験に予備試験受験生が流れてくるかというと、その数は多くありません。しかし、司法試験を目指すライバルがいないからといって、司法書士試験が簡単というわけではありません。

理由はシンプルで、「試験科目と出題形式が特殊すぎるから」です。

司法書士試験特有の「不動産登記法」「商業登記法」は、極めて実務的かつマニアックな知識が問われ、予備試験対策とは方向性が異なります。そのため、司法書士試験は「司法書士試験に特化したプロ受験生」同士の純粋な殴り合いになります。

4. 試験科目の比較:登記法という名の「魔物」

試験科目を見れば、その負担の差は歴然です。

資格 主な試験科目 最大の特徴
行政書士 憲法、行政法、民法、商法・会社法、基礎知識 行政法と民法で配点の6割以上。
科目を絞った学習が可能。
司法書士 憲法、民法、刑法、商法・会社法、不動産登記法商業登記法、民事訴訟法など全11科目 全科目に足切りあり。
登記法の記述式は極めて高度で時間が足りない受験生が多い。

行政書士試験は、「行政法」と「民法」という2本の柱を攻略すれば合格点が見えてきます。しかし、司法書士試験には捨て科目が存在しません。

特に「不動産登記法」と「商業登記法」は、手続きの微細な違いを正確に暗記し、かつ記述式試験では架空の事例に対して申請書を正確に書き上げる能力が求められます。

この「登記法」の学習量が膨大であり、ここで多くの受験生が脱落していきます。

5. 独学で合格することはできるのか?

最後に、それぞれの試験における「独学の可否」について、アザヨビ運営者の独断と偏見による見解を述べます。

行政書士は独学でも合格可能

行政書士試験は、市販のテキストと過去問、そしてYouTube等の無料動画講義を組み合わせれば、独学でも十分合格を狙えます。もちろん簡単ではありませんが、初学者が独学で挑んでも勝機はある試験です。

司法書士の独学は「茨の道」すぎる

結論を言えば、司法書士試験の完全独学はおすすめしません。
不可能ではありませんが、合格までに5年、10年とかかるリスクが極めて高いです。

理由は以下のとおりです。

  • 情報量が多すぎる:市販テキストだけでは、最新の先例や法改正、実務の細かい運用まで網羅するのが困難です。
  • 記述式対策が独学では限界:記述式問題は、プロの添削や解法テクニック(図の書き方など)を学ばないと、時間内に解き終わることすら難しいです。

司法書士を目指すなら、数十万円の投資をしてでも予備校を利用するのが、結果として「時間というコスト」を節約する最短ルートになります。

まとめ:ステップアップを目指すなら覚悟を決める

行政書士試験と司法書士試験。名前は似ていますが、その難易度には「地方大会」と「オリンピック」ほどの差があります。

行政書士試験に合格した人が、その自信を持って司法書士に挑むこと自体は素晴らしいことです。しかし、行政書士試験と同じ感覚、同じ勉強量で合格できるほど司法書士試験は甘くありません。

もしあなたが、行政書士試験を経て司法書士を目指すなら、一度「ゼロベース」に戻り、新人受験生として謙虚に膨大な勉強量に食らいつく覚悟が必要です。

その覚悟がある人だけが、合格率5%の狭き門をくぐり抜けることができるのです。


まずは行政書士から確実に攻略する

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