mini記述:民法債権#20

動画内容は、下記の「ウェブテキスト版」と同一です。そのため、動画を視聴しないで、下記の「ウェブテキスト版」のみに取り組んで頂いても問題はありません。
なお、解説内容は「アザラシ式記述対策講座」のものとほぼ同一となります。

ミニ記述チャレンジ ウェブテキスト版

問題1

Aは自己所有の家屋をBに使用させる賃貸借契約を締結した。当該家屋について、賃借人Bが和式トイレを洋式ウォシュレット付トイレに改装した場合その費用について、どのような形・名目でAへの請求の可否が決まるのか【賃貸借終了時に】に続く形で25文字程度で記述してください。

正解例
【賃貸借終了時に】
価値が現存していれば、有益費として請求可能となる。(25文字)

【解説】
賃貸借契約についての基礎知識を問う問題となっています。まず、必要費と有益費の違いは以下のとおりです。
・必要費…生活をする上で必要な修理などにかかった費用
・有益費…建物などの価値を高めるためにかかった費用
必要費は生活をするために必要な費用の支出なので、賃借人Bは「直ち」に賃貸人Aにお金を出してと言えるのです。急ぎで出したものなので、直ちに請求できます。
それに対して、有益費はあくまでも家屋のグレードアップのための費用なので、急ぎで必要なものとはされません。また、家屋を返すときにグレードアップした価値が残っていなければ、賃貸人Aとっては、最初に貸したときの価値のまま家屋が返ってきただけなのでお金を出す意味がありません。だからこそ、賃貸借終了時に価値が現存する場合にだけお金を出せばいいわけです。
必要費と有益費は、意味が違うものでその意味を把握することで賃貸人Aがいつお金を出すべきかがわかるようになります。まずは、必要費と有益費の違いを確実に覚えるようにしてくださいね。

問題2

Aは、自己所有の土地を建物所有目的とする賃貸借契約をBと締結し、Bは当該土地上に建物を建築した。その後、Aは当該土地をCに売却した。このとき、賃借人Bは新所有者Cに賃借権を主張したいと考えたが、賃借権の登記は行われていなかった。このようなときでも、賃借人Bが土地の新所有者Cに賃借権を主張できるのはどのような場合か【当該土地上の】に続く形で20文字程度で記述してください。

正解例
【当該土地上の】
建物についてBが所有権の登記をしている場合。(22文字)

【解説】
賃貸借契約は【A土地を貸すよ←→B土地を借りるよ】という、当事者同士が契約で合意することで発生する権利です。つまり、人との約束事から発生する権利なので債権になるわけです。
それに対して、土地の所有権は物そのものを支配する権利なので、物に対する権利としてはとても強いものとなるのです。
通常は、「債権 VS 物権」で闘いになれば勝つのは物権です。債権は、当事者同士の約束事なので、当事者以外には弱いのです。しかし、これでは人が生活する場所である不動産を安心して借りることができません。そこで、行われるのが不動産賃借権の物権化です。
設問のBも土地の賃借権を物権化することで、賃借権がパワーアップして新所有者Cの物権(所有権)に対抗して勝つことができるわけです。
土地の賃借権のパワーアップ方法が、設問の答えとなっている以下2つとなるわけです。
1.賃借権の登記
2.建物の所有権登記
なお、建物の賃借権のパワーアップ方法は建物の引渡しを受けることです。

問題3

Aは、自己所有の土地を建物所有目的とする賃貸借契約をBと締結した。その後、Aは当該土地をCに売却した。この場合、新所有者Cが新たな賃貸人となるのに賃借人Bの承諾は必要ない。しかし、CがBに賃料を請求するなど賃貸人としての権利を行使するためにはなにが必要となるのか【当該土地について】に続く形で20文字程度で記述してください。

正解例
【当該土地について】
C名義の所有権の登記が必要となる。(17文字)

【解説】
この設問は、貸す人である賃貸人側の地位を論点としたものです。賃貸人Aは、土地をBに貸したまま、土地をCに売っています。つまり、土地の新所有者はCとなります。この場合、特に何もしなくても新所有者=新賃貸人となるため、賃借人Bの承諾は必要ありません。
しかし、Cが新所有者だとしても、土地の登記名義がAのままだと賃借人Bとしては「この人は本当に新所有者なの?」と不安に思って当然です。そこで、Cが新所有者として、賃借人Bに対抗するためには所有権移転の登記をする必要があります。賃借人Bに対抗できるのなら、賃料も請求できるというわけです。
通常は、土地を買ったときは所有権移転登記をします。そのため、当たり前にすることをするだけで、賃借人Bに対抗できて新所有者かつ新賃貸人として振舞えることになるわけです。

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参考条文
民法
(占有者による費用の償還請求)
第百九十六条 占有者が占有物を返還する場合には、その物の保存のために支出した金額その他の必要費を回復者から償還させることができる。ただし、占有者が果実を取得したときは、通常の必要費は、占有者の負担に帰する。
2 占有者が占有物の改良のために支出した金額その他の有益費については、その価格の増加が現存する場合に限り、回復者の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる。ただし、悪意の占有者に対しては、裁判所は、回復者の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。
(賃貸借)
第六百一条 賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。
(不動産賃貸借の対抗力)
第六百五条 不動産の賃貸借は、これを登記したときは、その不動産について物権を取得した者その他の第三者に対抗することができる。
(不動産の賃貸人たる地位の移転)
第六百五条の二 前条、借地借家法(平成三年法律第九十号)第十条又は第三十一条その他の法令の規定による賃貸借の対抗要件を備えた場合において、その不動産が譲渡されたときは、その不動産の賃貸人たる地位は、その譲受人に移転する。
2 前項の規定にかかわらず、不動産の譲渡人及び譲受人が、賃貸人たる地位を譲渡人に留保する旨及びその不動産を譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意をしたときは、賃貸人たる地位は、譲受人に移転しない。この場合において、譲渡人と譲受人又はその承継人との間の賃貸借が終了したときは、譲渡人に留保されていた賃貸人たる地位は、譲受人又はその承継人に移転する。
3 第一項又は前項後段の規定による賃貸人たる地位の移転は、賃貸物である不動産について所有権の移転の登記をしなければ、賃借人に対抗することができない。
4 第一項又は第二項後段の規定により賃貸人たる地位が譲受人又はその承継人に移転したときは、第六百八条の規定による費用の償還に係る債務及び第六百二十二条の二第一項の規定による同項に規定する敷金の返還に係る債務は、譲受人又はその承継人が承継する。
(不動産の賃借人による妨害の停止の請求等)
第六百五条の四 不動産の賃借人は、第六百五条の二第一項に規定する対抗要件を備えた場合において、次の各号に掲げるときは、それぞれ当該各号に定める請求をすることができる。
一 その不動産の占有を第三者が妨害しているとき その第三者に対する妨害の停止の請求
二 その不動産を第三者が占有しているとき その第三者に対する返還の請求
(賃借人による費用の償還請求)
第六百八条 賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる。
2 賃借人が賃借物について有益費を支出したときは、賃貸人は、賃貸借の終了の時に、第百九十六条第二項の規定に従い、その償還をしなければならない。ただし、裁判所は、賃貸人の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。

借地借家法
(借地権の対抗力)
第十条 借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。
2 前項の場合において、建物の滅失があっても、借地権者が、その建物を特定するために必要な事項、その滅失があった日及び建物を新たに築造する旨を土地の上の見やすい場所に掲示するときは、借地権は、なお同項の効力を有する。ただし、建物の滅失があった日から二年を経過した後にあっては、その前に建物を新たに築造し、かつ、その建物につき登記した場合に限る。
(建物賃貸借の対抗力)
第三十一条 建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対し、その効力を生ずる。

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