mini記述:行政事件訴訟法#8

動画内容は、下記の「ウェブテキスト版」と同一です。そのため、動画を視聴しないで、下記の「ウェブテキスト版」のみに取り組んで頂いても問題はありません。
なお、解説内容は「アザラシ式記述対策講座」のものとほぼ同一となります。

ミニ記述チャレンジ ウェブテキスト版

問題1

Aは自宅の近くにゴミ処理施設が作られる計画を知った。この場合、行政庁にゴミ処理施設の設置許可を出さない旨を命じることを求めるにつき、Aが法律上の利益を有し、設置許可により重大な損害を生ずるおそれがある場合に限り、差止め訴訟を提起できる。しかし、これらすべてに該当しても差止め訴訟を提起できない場合もあるがそれはどのようなときか【Aが負う】に続く形で20文字程度で記述してください。

正解例
【Aが負う】
損害を避けるため他に適当な方法があるとき。(21文字)

【解説】
差止め訴訟と似たものとして、非申請型義務付け訴訟があります。この2つの要件はほぼ同じとなっています。下記に比較表を載せておくのであわせて覚えるようにしましょう。
義務付け訴訟は、「〇〇をしろ!」と求めるもので、差止め訴訟は「〇〇をするな!」と求めるものという違いもおさえるようにしてくださいね。

【差止め訴訟・非申請型義務付け訴訟の要件 まとめ】

原告適格 要件・損害の程度 裁判所

差止め訴訟

法律上の利益を有する者 重大な損害のおそれ。ただし、他に適当な方法がある場合はNG

損害回復の困難の程度を考慮・損害の性質や程度、処分又は裁決の内容と性質をも勘案する

非申請型義務付け訴訟 法律上の利益を有する者 重大な損害のおそれ+他に適当な方法がない

損害回復の困難の程度を考慮・損害の性質や程度、処分又は裁決の内容と性質をも勘案する

問題2

Aが、自宅の近くに設置されようとしているゴミ処理施設への設置許可処分へ差止め訴訟を提起した。当該設置許可処分は行政庁がその処分をすべきでないことが法令の規定からは明らかではなかったが、Aの訴えに対して裁判所は認容判決を出した。裁判所が認容判決を出したのはなぜか【処分をすることがその】に続く形で25文字程度で記述してください。

正解例
【処分をすることがその】
裁量権の範囲を超え若しくはその濫用と認められたため。(26文字)

【解説】
設問のような要件を、本案勝訴要件といいます。差止め訴訟の本案勝訴要件は以下のとおりです。
・差止めの訴えに係る処分又は裁決につき、行政庁がその処分若しくは裁決をすべきでないことがその処分若しくは裁決の根拠となる法令の規定から明らかであると認められるとき
・行政庁がその処分若しくは裁決をすることがその裁量権の範囲を超え若しくはその濫用となると認められるとき
以上2つのうちいずれかの条件に当てはまれば勝訴判決が出るというわけです。この本案勝訴要件は、義務付け訴訟にもあるので合わせてチェックしてみましょう。

 

【本案勝訴要件 まとめ】

本案勝訴要件
差止め訴訟 ・行政庁がその処分若しくは裁決をすべきでないことがその処分若しくは裁決の根拠となる法令の規定から明らかであると認められるとき
・行政庁がその処分若しくは裁決をすることがその裁量権の範囲を超え若しくはその濫用となると認められるとき
申請型義務付け訴訟 ・訴えに係る請求に理由があると認められ、かつ、行政庁がその処分若しくは裁決をすべきであることがその処分若しくは裁決の根拠となる法令の規定から明らかであると認められるとき
・行政庁がその処分若しくは裁決をしないことがその裁量権の範囲を超え若しくはその濫用となると認められるとき
非申請型義務付け訴訟 ・行政庁がその処分をすべきであることがその処分の根拠となる法令の規定から明らかであると認められるとき
・行政庁がその処分をしないことがその裁量権の範囲を超え若しくはその濫用となると認められるとき

問題3

 

Aはゴミ処理施設への設置許可処分を差止めるため訴訟を提起し、合わせて仮の差止めを申し立てた。このAの提起した訴訟は認容される可能性があり、仮の差止めが行われたとしても公共の福祉に重大な影響を与えるものではなかった。このような状況で裁判所が仮の差止めを命じるには、ほかにどのような要件が必要となるのか25文字程度で記述してください。

正解例
償うことのできない損害を避けるため緊急の必要。(23文字)
【解説】
この設問はどこかで見た気がしないでしょうか?実は、この仮の差止めの要件は仮の義務付けの要件(mini記述:行政事件訴訟法#7 問題3)とまったく同じなのです。
「仮の〇〇」は裁判に勝ってもいないのに、「〇〇をしてくれ」「〇〇をするな」と要求するものです。そのため、重大な損害が出るかどうかは要件とはならず、「償うことのできない損害」が出るかどうかが重要になってくるのです。
仮の差止めと、仮の義務付けの要件が同じであること、そして「償うことのできない損害」というキーワードが重要になってくることを押さえておきましょう。
参考条文
行政事件訴訟法
(差止めの訴えの要件)
第三十七条の四 差止めの訴えは、一定の処分又は裁決がされることにより重大な損害を生ずるおそれがある場合に限り、提起することができる。ただし、その損害を避けるため他に適当な方法があるときは、この限りでない。
2 裁判所は、前項に規定する重大な損害を生ずるか否かを判断するに当たつては、損害の回復の困難の程度を考慮するものとし、損害の性質及び程度並びに処分又は裁決の内容及び性質をも勘案するものとする。
3 差止めの訴えは、行政庁が一定の処分又は裁決をしてはならない旨を命ずることを求めるにつき法律上の利益を有する者に限り、提起することができる。
4 前項に規定する法律上の利益の有無の判断については、第九条第二項の規定を準用する。
5 差止めの訴えが第一項及び第三項に規定する要件に該当する場合において、その差止めの訴えに係る処分又は裁決につき、行政庁がその処分若しくは裁決をすべきでないことがその処分若しくは裁決の根拠となる法令の規定から明らかであると認められ又は行政庁がその処分若しくは裁決をすることがその裁量権の範囲を超え若しくはその濫用となると認められるときは、裁判所は、行政庁がその処分又は裁決をしてはならない旨を命ずる判決をする。
(仮の義務付け及び仮の差止め)
第三十七条の五 義務付けの訴えの提起があつた場合において、その義務付けの訴えに係る処分又は裁決がされないことにより生ずる償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があり、かつ、本案について理由があるとみえるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもつて、仮に行政庁がその処分又は裁決をすべき旨を命ずること(以下この条において「仮の義務付け」という。)ができる。
2 差止めの訴えの提起があつた場合において、その差止めの訴えに係る処分又は裁決がされることにより生ずる償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があり、かつ、本案について理由があるとみえるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもつて、仮に行政庁がその処分又は裁決をしてはならない旨を命ずること(以下この条において「仮の差止め」という。)ができる。
3 仮の義務付け又は仮の差止めは、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるときは、することができない。
4 第二十五条第五項から第八項まで、第二十六条から第二十八条まで及び第三十三条第一項の規定は、仮の義務付け又は仮の差止めに関する事項について準用する。
5 前項において準用する第二十五条第七項の即時抗告についての裁判又は前項において準用する第二十六条第一項の決定により仮の義務付けの決定が取り消されたときは、当該行政庁は、当該仮の義務付けの決定に基づいてした処分又は裁決を取り消さなければならない。
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