50代からの行政書士挑戦。脱サラ/定年後「第2の人生」を士業で勝ち取るための体力と知略

50代からの行政書士挑戦。本当に合格は目指せるのか?

今52歳… この年齢から始めて、本当に間に合うのだろうか?

50代になってから行政書士試験に挑戦しようと考えるとき、多くの人が「この年齢から始めて、本当に間に合うのだろうか?」という不安を抱えます。

結論から言えば、50代からの合格は十分に可能です。また、合格した後に行政書士資格を活かすこともできます。

しかし、20代や30代の受験生と同じやり方で合格できるほど、行政書士試験は甘い試験ではありません。

50代の受験生には、若手にはない「社会経験」という強みがある一方で、「記憶力や体力の衰え」という現実的な壁が存在します。この壁を根性論で乗り越えようとするのではなく、戦略的な「知略」と、自分を律する「体力管理」で攻略していくのが、50代の正しい戦い方です。

この記事では、脱サラや定年後を見据えて「第2の人生」を士業で切り拓きたいと考えている50代の方に向けて、合格を勝ち取るための具体的な戦略を解説していきます。

50代受験生の合格率は?データから見る現実

行政書士試験の合格率は、例年10%前後で推移しています。これだけ見ると「10人に1人しか受からない難しい試験」という印象を受けるかもしれません。

しかし、受験者の年齢層別データに注目してみると、面白い傾向が見えてきます。

※出典:試験結果分析資料 | 行政書士試験研究センター https://gyosei-shiken.or.jp/doc/exam/result/analytics.html

上記のグラフで示されているとおり、50代での合格者は19.1%もいるのです。60代以上の合格者と合わせると実に26.6%もの合格率を誇ります。これは20代の合格率21%をも上回るものです。

実は行政書士試験は、40代、50代の受験者が非常に多く、かつ合格者もしっかりと出ている試験なのです。かつてのように「資格試験は学生や若者のもの」という時代は終わりました。

ただし、ここで注意が必要なのは、50代の合格者の中には「かつて法学部だった人」や「仕事で法務に携わっていた人」が一定数含まれている点です。完全な初学者が、何の戦略もなしに挑んで10%の枠に入れるかというと、そこにはやはり明確な「知略」の差が出てきます。

50代初学者が合格を目指すなら、まずは「合格率10%」という数字の裏側にある、正しい勉強の進め方を理解することから始める必要があります。

50代が陥る「記憶力の罠」をどう抜けるか

「新しいことが覚えられない」「昨日解いた問題なのに、今日になると選択肢が絞れない」。これは50代の受験生が最も共通して抱える悩みです。しかし、これは老化のせいだけではなく、勉強のやり方が「50代の脳」に合っていないだけのケースが多いです。

「丸暗記」を捨てて「理解」に全振りする

若い頃のように、テキストを丸ごと暗記するような勉強法は、50代には向きません。50代の脳は、意味のない情報の羅列を拒絶しますが、その代わり「理由のある情報」を整理して理解する能力は、若手よりも優れています。

行政書士試験のメイン科目である民法や行政法を勉強するときは、「なぜこの条文があるのか?」「このルールがないと、誰が困るのか?」という背景(立法趣旨)を徹底的に掘り下げてください。これまで社会で揉まれてきたあなたなら、「ああ、あの仕事のトラブルと同じ理屈か」と納得できる場面が多いはずです。納得した知識は、そう簡単には忘れません。

社会経験が少ない若者は具体的な場面を想像できないことも多いのですが、50代になればこれまでの経験を活かせることが多いのです。

思い出す回数(想起)を増やす

1時間テキストを読むよりも、5分間「さっき何が書いてあったか」を思い出す方が、記憶の定着率は圧倒的に高まります。特に50代は、覚えることよりも「引き出す練習」に時間を割くべきです。机に向かっていない時間、たとえば散歩中や入浴中に「今日の朝勉強した判例の結論は何だったかな?」と自分に問いかける習慣をつけてください。

50代のための「知略」①:配点比率から逆算した重点攻略

行政書士試験は300点満点中180点で合格です。満点を取る必要はありません。限られた時間と体力をどこに投下するかを考えるのが、大人の知略です。

行政法と民法で180点を目指す心づもり

行政書士試験の配点は、行政法が112点、民法が76点です。この2科目だけで全配点の約6割を占めます。つまり、この2科目を徹底的にやり込めば、他の科目で多少ミスをしても合格圏内に滑り込むことができます。

逆に、商法や会社法は範囲が非常に広い割に配点が低く、深追いしすぎると時間だけが溶けていきます。初学者の50代であれば、商法は「基本事項だけ押さえて、あとは深追いしない」という割り切りも重要な戦略になります。

もちろん、これまで仕事で商法や会社法を意識することが多かったのであれば、イメージしやすく覚えやすい法律になります。この場合は商法や会社法も積極的に得点源にしていきましょう。

基礎知識の足切り対策を舐めない

行政書士試験には「足切り」があります。法律科目がどんなに高得点でも、基礎知識で全14問中6問以上正解しなければ不合格となってしまいます。50代の方は新聞を読み慣れているため、時事問題には強い傾向がありますが、油断は禁物です。

確実に足切りを回避するための知略は、対策しやすい「個人情報保護法」や「行政書士法」などの法律分野を完璧に仕上げることです。クイズのような時事問題に頼るのではなく、法律知識で確実に点数を積み上げるのが、大人の戦い方です。

50代のための「体力」:3時間の本試験を戦い抜くマネジメント

意外と見落とされがちなのが、試験当日の体力です。行政書士試験は3時間という長丁場。50代にとって、この3時間集中し続けるのは、想像以上に過酷な「肉体労働」です。

試験後半の集中力切れを防ぐ

多くの受験生が、試験終了間際のケアレスミスで泣きます。原因は脳のエネルギー切れです。3時間、法的思考をフル回転させ続けるためには、日頃から「長時間座って考え続けるスタミナ」を養っておく必要があります。

とはいえ、激しい運動をする必要はありません。週に数回の30分程度のウォーキングで十分です。血流を良くしておくことは脳の活性化に直結します。「勉強時間を作るために運動を削る」のではなく、「勉強の質を上げるために運動を取り入れる」という発想を持ってください。体力管理は、試験対策そのものなのです。

「老眼」との付き合い方も戦略のうち

笑い事ではなく、50代の受験生にとって「問題文の文字が見えにくい」というのは致命的なロスに繋がります。小さな文字を読み続けることで、目から来る疲労が脳のパフォーマンスを著しく低下させます。自分に合った眼鏡の準備や、日頃から本番に近いフォントサイズの問題集に慣れておくなど、フィジカル面での準備も怠らないようにしましょう。

独学で合格することは可能なのか?

50代からでも独学で合格することは可能です。しかし、そのためには若手以上の「教材選びのセンス」と「情報の断捨離」が求められます。

YouTubeという最強の武器を使い倒す

かつては予備校に通わなければ手に入らなかった質の高い講義が、今はYouTubeで無料で公開されています。50代の方におすすめなのは、複数の動画をハシゴするのではなく、「この先生だ」と決めた1人の動画を、ボロボロになるまで繰り返し見ることです。

耳からの情報は、視覚情報よりも脳に残りやすい傾向があります。通勤時間や家事の時間をすべて「耳学」に充て、法律用語が自然に口から出るレベルまで刷り込んでください。

市販の教材を利用する

50代の勉強において最も重要なのは「挫折しないこと」です。まずは書店などで理解しやすい参考書かどうかをきちんと確認して買うようにしましょう。

参考書は全体像をつかむためのものです。全体像が見えないまま細かい条文の暗記に入ると、脳が拒絶反応を起こします。まずは「法律って、意外と面白いな」と思える環境を自分で作ることが、独学成功の秘訣です。

記述式対策。50代の「書く力」をどう活かす?

記述式は40字程度の記述問題が3問出題され、配点は60点と非常に高いです。多くの初学者がここで苦戦しますが、実は50代の社会人にとって、記述式は「最大の得点源」になり得る分野です。

ビジネス文書の経験を転用する

記述式の採点基準は、綺麗な文章を書くことではありません。「必要なキーワードが盛り込まれているか」です。これまでの仕事で、報告書や企画書を「要点良く」まとめてきた経験があるなら、記述式の作法はすぐにマスターできます。

重要なのは、問題文を読んで「誰が、誰に、何を、どんな理由で」請求できるのかを、論理的に整理する力です。これは正に、大人が社会で培ってきた「事案分析能力」そのものです。記述式を恐れるのではなく、「自分の経験が最も活きる場所だ」とポジティブに捉えてください。

合格したあとのリアル。50代の「第2の人生」はどう変わる?

試験に合格して行政書士登録をした後、50代にはどのような未来が待っているのでしょうか。脱サラ組と定年後組、それぞれの視点で見ていきましょう。

「前職×行政書士」で即戦力として立ち上がる

50代で開業する最大のメリットは、前の職業での専門知識をそのまま活かせることです。 たとえば、建設業界にいた人なら「建設業許可」、金融機関にいた人なら「相続・遺言」といった具合に、自分が詳しい分野に特化することで、実務経験がゼロでも「業界に精通した専門家」として顧客から信頼を得られます。

特に営業経験がある人は行政書士開業にあたって強みとなります。士業とはいえ、営業力は必須です。営業力が備わっていれば行政書士事務所運営はスムーズにいくことでしょう。

若手行政書士には出せない、この「人生の厚み」こそが、士業の世界で勝ち残るための最大の知略です。

「定年がない」という究極の安心感

組織に属している以上、必ず「定年」という終わりが来ます。しかし、行政書士に定年はありません。

80歳になっても現役で活躍している先生はたくさんいます。50代でライセンスを手に入れることは、残りの人生30年、40年を「自分の力で稼ぎ、誰かの役に立ち続ける」ための権利を手に入れることと同じです。この安心感は、年金への不安を打ち消し、精神的な若々しさを保つための特効薬になります。

独学の勉強方法まとめ:今日から始めるSTEP

50代から合格を目指すための、具体的なまわし方を整理しておきます。

STEP1:まずは全体像を掴む

参考書を1冊読み切り、「行政書士試験で扱う法律の世界観」をなんとなく理解します。理解度は5割で構いません。

STEP2:行政法と民法を交互に回す

参考書を読む→YouTube講義を見る→過去問を解く。このサイクルを、配点の高い行政法と民法に絞って繰り返します。他の科目は後回しで大丈夫です。

STEP3:六法を「引く」習慣をつける

50代の勉強は「納得」が命です。過去問の解説を読んで分かった気にならず、必ず六法の条文に立ち返ってください。自分の目で条文を確認する一手間が、記憶を強固にします。

STEP4:隙間時間をすべて耳学に充てる

机に座っていない時間をどれだけ有効に使えるかで、勝負が決まります。スマホとイヤホンを「勉強道具」として肌身離さず持っておきましょう。

おわりに:挑戦を始めるのに遅すぎることはない

行政書士試験は、独学で簡単に合格できるほど甘い試験ではありません。特に50代からの挑戦には、相応の覚悟と戦略が必要です。

しかし、本気で取り組んだ先にある「第2の人生」は、今あなたが想像しているよりもずっと自由で、刺激に満ちたものです。組織の看板を脱ぎ捨て、自分の名前だけで勝負する世界。それは、これまでの人生で培ってきたすべての経験が報われる場所でもあります。

「もう若くないから」と諦めるのは簡単です。しかし、今日がこれからの人生で一番若い日であることも事実です。10年後、20年後に「あの時、勇気を出して一歩踏み出してよかった」と思える未来を、あなた自身の手で掴み取ってください。そのための知略は、もうあなたの手元にあります。

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